純真~こじらせ初恋の攻略法~

「最低です」

もうこの言葉しか出てこない。

「私の気持ちを無視して、強引に自分の気持ちだけを押し付けるだなんて」

押し付けられて心が動く人間なんているはずがないじゃないか。

そんな簡単な気持ちなら、こんなに苦労なんてしていない。

「湯川さんの気持ちを軽んじることなく、真っ直ぐ受け止める以前の問題です。もう二度と湯川さんと接したくありません」

男としては勿論、会社の同僚としても関わり合いたくない。

「橘さん……ごめん」

項垂れるように呟いた湯川さんだが、そんな姿を見てもどうしても許す事ができなくて、私は更に彼を追い詰める言葉を吐き捨てる。

「ちゃんとわかってます?湯川さんは今、一歩間違えば犯罪になるようなことを私にしたんですよ?」

「それは……」

「私が訴えを起こせば立派なセクハラ、強制わいせつ罪にだって問えるかもしれません。そうなれば湯川さんは職を失いますよ」

気持ちに任せてやったことかもしれないけれど、合意がなければ犯罪になりかねないということを理解するべきだ。

私にどれだけの恐怖と嫌悪を抱かせたのか、しっかり知るべきなのだ。

「申し訳ない。本当にごめん」

深々と頭を下げる湯川さんは、さっきとは全く違う。

ただの情けない男に見える。

「自分の気持ちを抑えきれなくなってしまった俺が全面的に悪い。今後のことは橘さんに任せるよ。どうなってもちゃんと受け入れる」

「……わかりました」

「じゃ、俺は別の部屋に行くから。帰りは別で帰ろう。自分で手配して会社で清算すれば大丈夫だから。本当にごめん……」

湯川さんはもう私と一切目を合わせることなく、のろのろと部屋を出て行った。

……怖かった……。