純真~こじらせ初恋の攻略法~

静まり返った部屋に、湯川さんの溜め息混じりの笑いが響いた。

「橘さんは素直すぎだよ」

「え……」

「あれだけ恐怖に引き攣った顔してたくせに。俺の言葉なんか無視して、藤瀬に助けてって言えばよかったのに」

確かにそうなのだけれど。

バイブの音が響いた瞬間、湯川さんの瞳から怒りや欲望の色が消えた気がしたんだ。

私に背を向けてたのも、ベッドに座り込んだのも、その証のような気がして。

私は電話を取るタイミングを失った。

ただそれだけだ。

「安心して」

湯川さんはそう呟くと、ジャケットの内ポケットから、もう一枚のカードキーを取り出して私に見せた。

「本当はもう一部屋取ってる」

「だったら初めからこんなことしないでほしかったです」

こんな強引なことをせずに、ただの同僚として接してくれていれば、こんなに湯川さんを毛嫌うこともなかったのに。

ここまで嫌いになってしまったら、今さら引かれても何事もなかったことにはならない。