純真~こじらせ初恋の攻略法~

私はポケットの中でゆっくりスマホのロックを外す。

解除方法は指紋認証にしていたおかげで難なく解除できたらしく、小さく震えたバイブが解除を知らせてくれた。

電話アイコンの場所も感覚で覚えている。

発着信履歴から電話をかけて、折り返してもらおう。

このままにして逃げ出したところで、ドアノブを回しているうちに確実に捕まる。

これ以上湯川さんを逆上させずこの場から逃げ出すためには、その方法しかない気がした。

ただ一つわからないのは、この電話が誰に繋がるかということだ。

今日は湯川さんメインで仕事をしていたので、誰とも連絡を取っていない。

昨日最後に誰と連絡を取り合ったのかは定かではないのだ。

多分、取引先の事務の女の子だったはず。

だいぶん親しくなった人なので、着信に気付けば折り返してくれるだろう。

そう願いながら、私は慎重にゆっくりとスマホを操作した。

手探りの操作を一度間違えてしまったら、きっともううまくはいかないだろうから。

「確かにやり方が強引すぎたかもしれない。けどさ、こっちは必死に好意を伝えても、俺のことを見てくれるどころか、迷惑そうな視線しか向けてくれないじゃないか。人の気持ち、軽視しすぎだろ」

湯川さんにそう言われて、私はハッとなった。

確かに私は湯川さんの気持ちには応えられないし、正直言って私にとっては有難い気持ちではない。

だから一度も考えたことがなかったのだ。

湯川さんの真剣な気持ちを、『迷惑』の一言でしか片付けていなかった。

本当に迷惑で諦めてほしいのであれば、ちゃんと湯川さんの気持ちを受け止めたうえで、真剣に断らなければならなかったのだろう。

だからといってこんな奇行に出るなんて間違ってるのだが。

「人をバカにし過ぎだ」

ずいっと一歩詰められた時、私のスマホのバイブが静かな部屋に響き渡った。