「左手、出して」


彪斗の方へ差し出した左手は、震えていた。


嬉しくて嬉しくてたまらない。


それと同時に驚きもある。


まさかプロポーズされるなんて。


「……怒ったり泣いたり、忙しいやつだな」


左手の薬指でキラキラ輝いている指輪を見ると、自然と涙が込み上げてきてしまった。


「ありがとう…彪斗…っ」


こんなに嬉しいことは人生で初めて…。


「ホントはこんなタイミングでプロポーズするつもりなかったのに、心友が怒るからこーなった」


責めるような、からかうような、いつもの口調。


それすらも愛しく感じる。


「…ごめんね…指輪の準備のために遅くなっただけなのに責めて…」