「おはよ、桜」


悠の病室に入ると、先に見舞いに訪れていた美香が笑顔で出迎えてくれた。

美香とは、出会った頃はいろいろあったけれど、この7年間は眠った悠を見守る同士ということもあって、すごく仲良くなった。


「おはよー」

「あ、ねえねえ。今日お見舞いのあとパンケーキ食べに行かない? 近くにできたんだよー、おいしいとこ」

「えー、私はいいけどさ。美香ダイエット中ってこの前言ってなかったっけ?」

「そんなこと言ったけ? あ、言った気がしてきたなあ。……一旦取り消し! ダイエットは明日からで!」

「意思弱っ。まあ美香は痩せる必要ないしね。むしろもうちょい太んなよ〜」

「それは嫌! でも今日は食べる!」


ーーなんて、軽い冗談を言い合える言い合えるほどの仲だ。

そんな話をしながらも、私は悠が寝ているベッドの傍らの出窓に、持ってきた一輪の花を置く。

昔はもっと大きな花をにしていたけれど、あっという間に置き場所が無くなってしまいそうになったので、途中から毎日一輪ずつ持ってくることにしていた。

そして持ってきた花は、硝子の花瓶に毎日刺していくという形を取っている。


「今日は青い花かー、いい色だね」

「うん、ブルーローズ」