海風に起こされ目を開けるとそこは海だった。
誰かにお姫様抱っこをされていた。
さっきまでの記憶があまり残っていない。
どうしてこうなったのかさえももう覚えてはいない。

??「‥‥すまない私が無神経なばかりに娘を」
??「お父様やめてください!██を降ろしてあげて!」
??「私はこの子に酷いことをしたんだぞ!」
??「だからって無かったことにするのですか!」

どういうこと?
気がつくと私の目の前は真っ青な海しか見えていなかった。
そして正面からくるとても強い強風。
あぁ‥‥私落ちてるんだ‥‥。
ジャボーンッ‥‥。
高い水しぶきをあげて私は海の底へ落ちていく。
だんだん目を開けるのも大変になって息も苦しくなってく。
私‥‥死ぬんだ‥‥さようなら████。

春の風が髪になびき鼻をくすぐる。
目を覚ますとベッドの上にいた。
カーテンが風になびいている。
ほんのり消毒の香りがしていた。
ここは病院なのだろうか。
廊下側を見ると同い年であろう男女3人が座っていた。
もちろん私の全然知らない人だ。

邪来「目を覚ましたんだな!」
琉萌「あなた海で倒れてたのよ?」
萌津「名前言えるかい?」

私の‥‥名前?
名前‥‥思い出せない‥‥。
思い出そうとする度に頭が痛くなる。
まるで思い出すなと言っているように
そんな私を慰めるように1枚の桜の花びらが私の手に乗る。
私が起き上がろうとするとズキッと痛みが全身に走った。

邪来「お前すげー大怪我してたんだぞ?」
琉萌「生死をさまよってたって先生が。」
萌津「君って僕達と同じぐらいだよね?親は?
まぁ僕達も親はいないんだけどね‥‥てへへ。」

親‥‥ゾクッ‥‥!
親で思い出したのは怖い目をした男の人。
私に向かって大きな声で罵倒しながら‥‥。
気がつくと私は冷や汗をかいていた。
女の子が私の汗を拭いてくれる。

邪来「思い出せそうにないのか‥‥名前だけでも決めよ。」
琉萌「‥‥青緖は?服が青だし青っぽいイメージでしょ?」
青緖「青緖‥‥。」
萌津「気に入った?」

私は小さくうなづいて窓の外を見た。
桜が満開に咲いてとても綺麗だった。
春━━━━━それは出会いの季節。
私達は春風に後押しされたように新生活に1歩踏み出した。