まあ、お酒と言う楽しみがなければ仕事が進まないのは事実である。

そう思いながら、行きつけの本屋に足を踏み入れると新刊コーナーへと向かった。

「あった!」

平積みされている最新巻に手を伸ばそうとしたら、
「わっ!?」

「おおっ」

向こうからほぼ同時にやってきた大きな手とぶつかった。

「す、すみません!」

慌てて手を引っ込めて謝ったのと同時に、私は驚いた。

「い、いえ、こちらこそ…」

相手も私の顔を見て、驚いた様子だった。

「あの…」

そう話を声をかけてきた彼に、
「先日は、ありがとうございました」

私はお礼を言った。

その人は、酔っぱらった私に声をかけてきたスカジャンの彼だった。

当たり前だけど、酔っていない状態で彼の顔を見たのは今回が初めてである。