彼女のセカンドライフ


「彼を知ってたんですか?」

「ええ。ちょうど事故現場に足を運んだ時のこと、一人の青年が、汗だくになりながら、その周辺の聞き込みや、時に、泥まみれなりながら、現場付近で物的証拠となるものを、探されてまして、その時に声をお掛けして、協力を願い出たんです」

「英君一人で?」

「ええ」

「他には?」

「いえ、ずっとお一人で懸命に」

岩路の言葉に愕然とした凪美子。

あの時、冷たく武尊を追い返したにも関わらず、武尊は息子のためにずっと目撃者捜しをしていたなんて、思いもしなかった。

むしろ文利がやってくれているものだと思っていた。

その後付け加えるように、「武尊君も――」だなんて。

全ては文利のおいしいとこ取り。

息子の奇跡的な回復に浮かれ、武尊の気持ちなんて考えもしなかった。

まして自分が文利に感謝してる姿を目の当たりにした、そんな武尊の気持ちを思うと、胸が痛み、同時に自分を責める凪美子。