彼女のセカンドライフ


その後も、武尊と一緒に探すことはなく、仕事を理由に協力はしなかった。

そしていつも凪美子に伝える役は文利だった。

「村田君も忙しいのに、息子のためにありがとう」

「いえ、蓮見さんの苦しんでる顔を見てる方が辛いですよ」

文利はいつしか凪美子を安心させ、信頼まで勝ち取っていた。
 
相変わらず事件の進展はないものの、凪美子の息子、孝太郎が入院してから一ヶ月が過ぎた頃、孝太郎の指がピクっと動いた。

凪美子がその変化に気付き、息子の名前を呼び続ける。

その声に導かれるように孝太郎は目を覚まし、奇蹟的に意識を取り戻した。

文利を含め、病室では喜びを分かち合っていた。

孝太郎は、日が経つにつれ、よく喋るようになり、リハビリにもできるまで回復して行った。

凪美子は息子の回復に、嬉しさと、また毎日のリハビリに忙しく、武尊のことは二の次になっていた。