文利は、武尊を病室の外に連れ出し、
「気の利いた言葉一つも言えないなら来ない方がマシだ! 反って彼女の負担になるだけだからな!」
確かに、文利の言う通りだった。凪美子に何もしてやれない。
今の自分に出来ること――
苦しむ彼女は見たくない。ならば⁉
進展していない、ひき逃げした犯人を探し出すこと!
炎天下、武尊の犯人捜しが始まる。
すでに警察がやっていたであろう、目撃者捜し、事故現場に行き、一からその付近でも聞き込みを始めた。
近くの電柱には、目撃者捜しの看板が掲げられていた。
「昼でもこんな閑散としてるなら、夜はただ静寂に包まれてるだけか……」
武尊は辺りを見渡し、独り言を言った。
途方に暮れそうになったが、気持ちを切り替えて、辺りに事故と関連する何かが落ちていないか、くまなく探した。
そんなものあればとっくに警察が見つけているし、どんな破片も部品も見落とす訳がない。
分かっていたけど、武尊の気持ちが許さなかった。
汗だくになりながら必死で探した。



