凪美子の息子が事故に遭ったと知らせが入る。
ひき逃げだった。
一命は取り留めたものの、意識不明の重体。
予断を許さない状態だった。
息子を引いた犯人の行方は分かっていない。
事故当日、息子は一人ツーリングを楽しんでいた。思い立って田舎の祖母に会いに行ったその帰りの出来事。
見通しがよく、大通りでありながら、真夜中であったこともあり、目撃者はいなかった。
また田舎道で、監視カメラもついていなかったため、捜査は難航していた。
事故当初、凪美子の元に知らせが入った時は、凪美子自身呆然として、信じられないと言った様子だったが、手術室から出来て、集中治療室に運ばれて行く、変わり果てた息子を見た時、その場に崩れ落ちそうになり、何とか周りに支えられて立っているような状態だったという。
数日経って武尊にもその連絡が、岡本から入った。
「社長には口止めされていたんだけど、武尊君には就活に専念してほしい、余計なことで気を揉まないようにって。でも、放っておけなくて……」
岡本の言葉に、病院へ急いだ武尊。
病室に入ると、少しやつれた凪美子がいた。
献身的に息子の手をマッサージしていた。



