文利の件がありながらも、武尊は凪美子と会うのは止めなかった。
好きな気持ちの方が勝っていたから。
いつものように、二人で会っている時、浮かない顔をしている武尊に気が付く凪美子。
「どうかした?」
「えっ⁉」
「何か心配事でもあるの?」
「何で?」
「話しかけても、上の空な感じだから」
「あぁ、別に何でもないよ」
凪美子が心配して武尊に聞いたが、何となく様子がおかしかった。
「凪美さん、僕といて楽しい?」
不意に武尊が聞いた。
「えっ⁉」
一瞬固まる凪美子。
「どうして急にそんなこと?」
「いや、何となく……一緒にいて、僕一人が楽しいだけじゃ意味ないし、凪美さんには幸せ感じてほしいから」
武尊は凪美子によく言う、「あなたが幸せじゃなきゃ意味ないから」と。
「楽しいわよ? 武尊君の笑顔見て、一緒にいて、武尊君が幸せなら、私も幸せよ?」
その答えは、武尊が幸せなら、自分もと、武尊の気持ちを優先しているような、凪美子の気持ちは付属のような気がした。



