会社でも、二人の距離感は戻って行ったが、依然として、凪美子は態度は変えず、休日でも二人で会うことはあっても、恋人同士のようには、振舞ってくれなかった。

武尊が手を握ろうとすると、凪美子は髪をかき上げたり、指を組んで伸びをしたりと、わざとはぐらかした。

「ねぇ、英君?」

凪美子が話し掛けて、武尊を見た時、武尊がとても寂しそうな顔しているのに気が付いた。

武尊は、凪美子の声にすぐ反応して笑顔を見せるが、その一生懸命耐えている姿を見て、凪美子は胸を締め付けられる。

少し先を歩く武尊の手を、凪美子は優しく触れ、握った。

それに驚きながら、振り返る武尊に、

「ごめんね? 辛い思いさせて。私もきっと、あなたを、武尊君を好きだったと思う」

武尊の気持ちに応えた。
 
「武尊君――」 確かにそう言った!

バイトから彼氏に昇格した瞬間だった。