はっきりと答えないまま、二人は店を出た。

駐車場で、凪美子が車に乗り込もうとした瞬間、武尊は凪美子の腕を掴んで、自分に引き寄せた。

そして凪美子の頬にそっと手を添えてキスをした。

驚き、腕を払おうとした凪美子を、強く抱き締めた。

しばらくして唇を離した武尊は、

「僕のこと、もうとっくに好きなくせに」

真顔で言った。

凪美子は何も言えず俯いた。いや、心臓が飛び出そうなほど高鳴っていた。

――ま、まさか私ときめいてる⁉ 久しぶりに⁉ 動揺してるのバレてる⁉ ちょっとマジでヤバいんですけど! 

顔を赤らめる凪美子。

年の差を拭いきれないのは分かっている。

でも、「この出会いは、導かれたもの。この世で結んだ縁は、来世でも関りを持つと言われる。ならば、前世でも自分達は縁を結んでいるはず。だからこの出会いは運命なんだ、遠い古からの約束だ」 武尊は言う。

そして年齢の差が無意味なものと主張する。

「僕はずっと、追いかけていた気がする。遅くなってごめん……ってこんな理屈じゃダメ?」
 
年の差を埋めるための、精一杯の武尊の言葉。

その言葉に対して、凪美子は優しく笑い返した。