帰りの車の中、凪美子は武尊にある提案をする。
「英君? よかったらうちでバイトしない?」
「えっ⁉」
「そんな変に考えないで? うち今ね? データ入力の人材を募集してるの、英君さえ良かったら、だけど、英君自身も、たくさん掛け持ちして、駆け回るより、一つで集中する方が、就活にも卒論にも時間を使えると思うの」
凪美子は武尊が気を使わないように言った。
それだけではなく、武尊の体のことも気に掛けていた。
「何で僕に、カームクロの社長であるあなたが?」
「何でかしら? まぁ、一つ理由を挙げるなら〝 縁 〟ってとこかしら。偶然に何度も会うって、何だか面白くない⁉」
凪美子の説得に、少し強引な気もしなくはなかったが、武尊は、凪美子の言う〝 縁 〟というものを信じてみようと思った。