この年になって、自分を好きだと言った武尊の気持ちを大切にしたい、そう思った凪美子は、さらに半年後、武尊が後押ししてくれた、父との思い出でもある、カジュアルブランドを立ち上げた。
その名も、
〝 凪極と尊極 〟
凪美子のNと、武尊の名前から一字取り、尊いを音読みさせたSとで、N極とS極と読む。
武尊の、運命の磁石の話から、そう名付けた。
少し風変りだが、最近、外国人観光客が多くなり、その表記がウケ、話題となった。
暖かな春の陽射しの中で、武尊を思いながら、オープンした店を見上げる凪美子。
「凪美さん……」
「えっ⁉」
懐かしい声がして、思わず振り返った。
その後すぐ、くすっと笑って思い直す。



