「きっとね? あなたに出会ってからだと思うの」
母は凪美子に笑い掛けた。
驚いたまま、見つめ返した凪美子。
武尊から凪美子とつき合ってることを聞かされた時は、親子ほどの年の差に、それだけで、快く思えなかった。
偏見の目で見られるとか恥かしいとか、自分達が良くても、世間はそうじゃない。
特に女性が年上で、男性が未成年なら相手の女性を悪く言う。
例え二人に真の愛があったとしても、少年の方に責任能力がないとどうしても、年上の女性の方に非難の目が向けられる。少年は大人に守られる。
でも考えてみたら、武尊は立派に成人している。責任能力だって立派に果たせる。
「何があろうと、何を言われようと、あなたの盾になって、あなたを守ったはず」
ただ自分が、体裁を守りたかっただけだったと、そのことに気付いたと、母は語った。
「あんなに、あなたのことを好きだと言っていたのに、病気で苦しんで、親に心配かけまいと、文句一つも言わずに、健気に耐えてたの! そんなことされて、引き離すことなんてできないでしょう? もうとっくに認めてたのに、何も言ってあげられなかった」
泣き崩れる母。
「武尊君はきっと分かっていると思います、お母様のお気持ち」
寄り添う凪美子。



