ノートを読み終えた凪美子。
思えば、互いに数合わせで、出席した合コンから始まった。
それから何度も偶然に、出会いを繰り返した。
武尊に告白され、困惑していたはずが、気付けば自分の方が、彼を好きになっていたこと、懸命に自分を好きだと、惜しみなく言葉をくれる武尊、武尊からのキス、初めて手を繋いだ日のこと、短かったけれど、一生分の愛をもらった気がする、とても凝縮された濃厚な思い出。
武尊が旅立ってから、なぜか、涙は出なかったのに、今になって、凪美子の目から涙が溢れ出した。
今になって、武尊がいないことを実感した。
「武尊君! 武尊! 凪美さん今幸せじゃない!」
止めどなく流れ出す涙を、隠すように、手で顔を覆いつくし、声を殺し、肩を震わせ、凪美子は泣いた。



