武尊の葬儀には、たくさんの人が、若い死を悼んだ。
「たけうくん、ねんねしてう」
「うん、そうね? ちょっと疲れたみたいだから、ねんねさせてあげようね?」
母、紫の言葉に、大きく頷く秀奈。
まだ死を理解できない、秀奈のあどけなさが、余計周りの涙を誘った。
それから秀奈は、凪美子の所へ行き、
「あい!」
小さな掌に乗せられた、折り鶴を差し出した。
「武尊君と折ったの?」 凪美子が聞くと、自慢げに首を縦に振った。
「あげゆ」
「いいの?」
凪美子が聞き返すと、小さいながらに、何かを察しているのか、「うん」と息で返事する秀奈。
「ありがとう」
秀奈の掌からそっと取り、秀奈と二人で折っている、武尊の姿を思い浮かべた。
葬儀は、親族席や一般席は設けず、また盛大ではなかったが、弔問客の多さに、武尊の母をはじめ、家族は、感謝の気持ちでいっぱいだった。
どれほどたくさんの人から、武尊が愛されていたか、言葉もないほどだった。



