「武尊君、頑張ったね。いっぱいいっぱい我慢したね! 就職も決まったし、バイトも卒論もよく頑張った! ほんっとにお疲れ様」
眠ったままの武尊を抱き締めて、そっと顔を撫でながら、語りかけるように凪美子は言った。
周りにいた家族も、眠りについた武尊を見て涙した。
呼んでも、二度と返事をしない武尊に、母はすがりついて泣いた。
「変われるものなら代わってやりたい! なんで私じゃなく、人生始まったばかりの武尊なの! 苦労しかさせてない! ごめんね、武尊。苦しんで、何のために生まれて来たか、こんな風に産んで、ごめんね武尊!」
泣きすがる母に、武尊の姉が寄り添う。
俯いた兄の目から、涙がこぼれ落ちた。
武尊の父は、背中を向けて、大きく肩を震わせていた。
救いだったのは、家族や大好きな凪美子に見守られながら、最期を迎えたこと、とても穏やかな顔で眠っていたことだった。



