凪美子が仕事の時は、姉や母が交代で武尊を看病し、夕方には、父と兄が武尊を看た。
ただ、凪美子は、自分が仕事へ行っている間に、武尊にもしものことがあったらと、仕事に行く前はいつも、見送ってくれる武尊の笑顔に、後ろ髪を引かれる思いだった。
家に戻ると、「おかえり」 笑って武尊が迎えてくれると、安堵と同時に、脱力感を覚えた。
武尊は、特別なことは何も言わなかった。
皆で過ごす毎日こそが、武尊にとって、特別だったから。
ベッドから起き上がれない日が続く。
久し振りにみんなが揃った休日。
ベッドに横たわる、武尊を囲みながら、いつもより賑やかだった。
笑い声が武尊の耳に響く。
武尊はそれを静かに聞いている。
微かに笑っていた。



