数日前、病室では、主治医が武尊に、家族がいる中、抗がん剤治療を止め、緩和治療に切り替えることを伝えていた。
そのあと、母が、自宅治療にするか、緩和ケア専門の施設へ行くか、武尊の意向を聞いていた。
「したいようにしなさい」 と前振りをしておきながら、自宅にいても、みんな仕事で出払ってしまうし、そんな家に、一人でいても楽しくはないだろうし、それに引き換え、施設だったら、痛みにもすぐ対応してくれ、必ず誰かがいて話し相手になってくれる、寄り添ってくれると思うし、そっちの方がいいと思うなど、母の意思が伝えられているようで、もはや、選択肢がないように思えた。
――ふっ。どっちって、もう答えが出てるじゃないか。母さん昔から変わらない。
表現下手なんだよな。その言い方じゃ、勘違いしてしまうよな。分かってるよ、言われなくても。心配の仕方が下手なんだ。
胸の中で武尊は呟いた。
「僕はホスピスに行くよ」
武尊は精一杯笑って言った。



