彼女のセカンドライフ


「武尊君は、何かしてほしいだなんて、そんなこと思ってないと思います! 社長が会いに来てくれることが、何よりも一番の癒しになっているはずです!」

「そんなことない! あなたに彼の気持ちなんて分かるはずない!」

「分かります! 私も旦那を病気で亡くしました! 今より小さな秀奈を連れて、毎日会いに行きました! 秀奈を見るなり笑顔見せて、とても大事に、優しい目で秀奈を抱き締めていました。この子を残して死ねない、生きる糧だって!秀奈も、幼い記憶の中に、パパの温もりを覚えています! 私に時折話してくれるんです。自分の言葉で、私に、写真を見ながら、パパに抱っこされた日のことを。だから、武尊君にとっても、社長が生きる糧なんです」
 
辛い過去を持ちながら、それと向き合い、小さな秀奈を育てながら必死に生きている岡本が、凪美子をなだめた。

「みんな分かってますから、社長、一人で抱え込まないでください」

紫は凪美子の手を握り締めた。

武尊と同じ台詞を言う紫の手は、とても温かかった。