それから、みんなが帰ったあと、残った凪美子に、武尊はカームクロのことを聞いた。
新しく立ち上げる、カジュアルブランドの方は順調か、など。
根詰めて仕事し過ぎないように、何でも一人で抱え込まないように、ちゃんと周りに相談すること、無理はするだろうから、無茶だけはするななど、仕事や体のことを心配する武尊。
凪美子は、胸がいっぱいになり、武尊の言葉一つ一つに、首を縦に振りながら聞いていた。
見舞いを終え、会社に戻る凪美子。
「あー! 何で! 何で! 何で!」
社長室で叫びながら、周りに置いてあるものをぶちまけた。
その物音に驚き、紫が駆け付けた。
入ると、凪美子が、机の書類やファイルを振り落として暴れていた。
「何やってるんですか、社長!」
止めようとする紫。
「何でよ! 何で! 私は彼に何もしてあげられない! むしろ彼に勇気づけられて! 痛みはおろか、心の苦痛すら取り除いてあげられないの! こんな自分に腹が立つ! 何っにもしてあげられないの! 情けない!」
泣き崩れる凪美子。
いつも冷静で穏やかな凪美子が、こんな感情をむき出しにするのは、初めてだった。



