凪美子と武尊の母親が話している側で、
「武尊、何かごめん」
文利が突然謝って来た。
よく聞くと、目撃者捜しを手伝わなかったことや、「風呂入ってんのか」 と、武尊の事情も知らないで、心無いことを言ったことに対してだった。
「あぁ、もういいよ。過ぎたことだし」
「でも……」
「自分の気持ちが苦しいんだろ? だから許すよ。その代わり僕のお願いも聞いてよ」
「何だよ」
「これからは、何に対しても、本気で向き合ってほしい」
武尊の言葉に、あまりピンとこない感じの文利。
「自分の気分次第で人に寄り添ってみたり、損得勘定したり、自分都合で結果出したりするのは止めてほしい。そんなことしてても、自分の望むべき道は、見つからないと思うから。僕には、もう出来ないから、お願いするんだ」
文利が、武尊の真意を、ほんとに理解したかどうかは分からないが、頷いていた。



