躊躇ったであろう、武尊の部屋をノックする音がした。ドアが開いて、
「武尊、ちょっといいか? 悪いがお金貸してもらえないか」
父が床を見つめながら武尊に言った。
「また⁉ この間貸したばっかりじゃないか」
武尊は目を伏せ眉間にしわを寄せた。
武尊の家は、父がレストランを経営していた。
一時は繁盛し、二店舗、三店舗と広げ、それ以外に土地に手を出し、土地ころがしを夢見たが、そんな知識も、器用さも才能すらもない人間が出来るはずもなく、どうしようもない土地を、反って借金を作って手放した。
広げた店も振るわなくなり、見る見るうちに借金地獄へ。
自転車操業に陥った。
子供の稼いだお金にまで手を出すようになり、それも慢性化して、当たり前のようになっていた。



