外科治療も放射線治療も、見込みがないと言われておきながら、医者も匙を投げたにも関わらず、あの時、冷静に聞いていた、治ると思っていた自分に笑ってしまう。
武尊の目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「死にたくない」
本気でこの時思った。
そう思うと、無性に、凪美子に会いたくなった。
それまで何も言わなかった武尊が、
「凪美さんに会いたい……」
鎮痛剤のせいか、うわ言のように言う。
その姿は、もう見ていられないほどだった。
胸を痛めた武尊の母親は、恥を忍んで凪美子に会いに行った。
カームクロ応接室、俯いたまま座る、武尊の母親を、そっと見つめる凪美子。
あまり身を構わず、やつれた容姿から、武尊が良い状態でないことが伺えた。



