がある日、腹部が酷く痛みはじめた。
留置させていたステントは破損し、検査していたにもかかわらず、がんが転移していた。
再び腸閉塞を起こし、ステント治療も出来ず、腸管の内容物を排出させるのが精一杯だった。
気力とは反対に、入院してから、見る見るうちに、武尊は弱って行った。
主治医に武尊は、
「何だか、何も知らない方が、気力でやり切れたような気がするよ。だって病名を聞いてしまうと、気にしないでいようとしても、気持ちのどこかでやっぱり、〝 死 〟を意識してるんだと思う。だから自然と体も弱って行く気がするよ」
そう漏らしていた。
さらにがんは、すい臓全てを覆いつくして行った。
再び黄疸症状が出た。
どんどん腹痛も増し、疼痛コントロールも出来なくなって行った。
武尊の体力も、限界を達していて、医師より、抗がん剤治療から緩和治療への移行を告げられた。
がんが転移していたことは、武尊には伝えられなかった。
でもきっと、本人は、自分の身体のことを分かっていただろうに違いない。



