家に帰ってから武尊は、カームクロのオフィシャルサイトを覗いてみた。
凪美子自身、デザイナーとしての経歴なども書かれていた。
そのサイトはとてもオシャレに作られていて、彼女のデザイナーとしてだけでなく、
起業家としての才能まで引き立っているようだった。華麗な経歴にさえ見えた。
――同じ人間でも身分というか、人間的価値にも格差を感じる。
仰向けになり、天井を見つめながら武尊は思った。
漠然と就活をしている自分は、やりたいことがない、夢、目標すらない。
凪美子が羨ましく思えた。
すると下から、何か騒ぎ声が聞こえて来た。
「どうするの! 今度の支払い! こんなんじゃ払えないわよ!」
母の声だ。
「はぁ~またか……」溜息を吐き、耳を塞ぎながら寝返りを打つ武尊。
「もう今度はあなたが言ってよ! 私もうこれ以上あの子には言えないから!!」と更に母の声が大きく二階まで響いた。
その声のあと、しばらくしてから階段を登ってくる音がした。
その音は重い足取りそのものだった。



