病院に戻った武尊は、数日経って主治医からの今後の治療法を説明された。
不思議と余命を聞いても、なぜか驚きもしなかった。
自分なりに、色々調べて、覚悟はできているつもりだったから。
それから即、すい臓がんで見られる、黄疸の症状がひどかったので、胆管に詰まった胆汁を取り除くための処置(胆管ドレナージ術)が行われた。
鼻からチューブを入れ、緑黒い胆汁が管を通って出された。
通常なら、茶褐色や黄色だが、長時間肝臓と胆のうに溜まっていたため緑黒かった。
入院してから絶食をし、必要な栄養分は点滴で摂取。
便やガス、消化液が腸管内で溜まってパンパンになっている、ぽこんと出ているお腹。
腸閉塞の治療に、ステント治療が行われた。
ステントは金網のことで、筒状の金網で閉塞した部分を押し上げる治療のこと。
そのお陰で腸管内のものを排出することが出来、あの激痛から解放された。
そしてそのまま、この状態を保ちながら治療が続いた。
安定しているかのように思えた。
武尊は、少ない可能性に賭け、凪美子と再び会うために、延命治療を選んだ。



