次の日武尊は、凪美子に会いに行った。
突然の会社訪問に、驚いた凪美子。
「武尊君⁉ どうしたの? 痩せた? 顔色も何だか……」
「焼けたかも」
そう答える武尊に、違和感を覚える凪美子だった。何となく武尊の影が薄く感じた。
焼けたにしても、浅黒いというより、黄色い、まるで黄疸のような――そう思いながら武尊を見つめていると、
「凪美さん、色々とありがとう。正式にバイト辞めに来た。急だけど、もう来られない」
武尊の言葉に、凪美子は驚きもしなかった。
「就職決まったのね?」
「あ、うん。だから、お世話になりました。またいつか、会える日を楽しみにしています」
「うん。おめでとう! いつでも会いましょう? あ、そうだ、お祝いしないとね? 息子も武尊君に会いたがってたし、近いうちに三人でご飯でもしましょう」
笑って凪美子が言った。
それに静かに笑って頷く武尊。
「それじゃぁ、お元気で」
一礼して去って行く武尊を見ながら、何となく不安を覚える。
それからあの時の、「二度と会えないような――」感覚にまた陥った凪美子。
歩きながら武尊は覚悟を決めた。
凪美子の優しい笑顔が頭から離れない。
――凪美さん、あなたが好きだ。これは別れじゃない! 僕がまた会いに来るための試練なんだ!
涙を堪えながら、胸を張った。



