俺はお愛想の笑顔を作って、頬を掻いた。
「そんなことを言ってくれるのは風間さんくらいですよ」
斎賀の次期当主の俺に、一族内で婚約者がいることは、多くの人間が知っていることだ。風間さんも、翠の存在をよく知っている。知った上で、入庁以来俺にアプローチ的なことをしてくるのだ。
「斎賀君の可愛い婚約者は置いておいて、先輩と後輩が一緒にごはんに行くくらいいいんじゃない?」
「風間さんに誘われてるなんて周りに知れたら、ひどいやっかみに合うかもしれませんね、俺」
照れて見せると、風間さんは悪戯っぽく笑う。こういう表情は本当に上手い。年上なのに可愛らしいのだ。
「やだ。私から誘うんじゃないの。斎賀くんが誘ってくれなきゃ。そういうものでしょう?」
「女性から誘ってくれたっていいじゃないですか」
「私、見た目より古風なのよ。自分から男性を誘ったりできないわ」
あきらかに誘っている状況で冗談めかして言っても嫌味に聞こえないのだから、風間恋子はさすがだ。この手練手管で一体何人の男を陥落させてきたのだろう。
「斎賀くん、ねえいつ誘ってくれるの?週末のたびに予定を開けておかなければダメ?」
俺ひとりに粉をかけているわけじゃないのはよくわかるが、いい女に言い寄られるのは男として悪い気はしないものだ。これがもっと若い頃なら、躊躇いもなく一夜でも二夜でもお相手してもらうところだが、生憎俺ももう女遊びをしていい立場でもない。
「そんなことを言ってくれるのは風間さんくらいですよ」
斎賀の次期当主の俺に、一族内で婚約者がいることは、多くの人間が知っていることだ。風間さんも、翠の存在をよく知っている。知った上で、入庁以来俺にアプローチ的なことをしてくるのだ。
「斎賀君の可愛い婚約者は置いておいて、先輩と後輩が一緒にごはんに行くくらいいいんじゃない?」
「風間さんに誘われてるなんて周りに知れたら、ひどいやっかみに合うかもしれませんね、俺」
照れて見せると、風間さんは悪戯っぽく笑う。こういう表情は本当に上手い。年上なのに可愛らしいのだ。
「やだ。私から誘うんじゃないの。斎賀くんが誘ってくれなきゃ。そういうものでしょう?」
「女性から誘ってくれたっていいじゃないですか」
「私、見た目より古風なのよ。自分から男性を誘ったりできないわ」
あきらかに誘っている状況で冗談めかして言っても嫌味に聞こえないのだから、風間恋子はさすがだ。この手練手管で一体何人の男を陥落させてきたのだろう。
「斎賀くん、ねえいつ誘ってくれるの?週末のたびに予定を開けておかなければダメ?」
俺ひとりに粉をかけているわけじゃないのはよくわかるが、いい女に言い寄られるのは男として悪い気はしないものだ。これがもっと若い頃なら、躊躇いもなく一夜でも二夜でもお相手してもらうところだが、生憎俺ももう女遊びをしていい立場でもない。



