不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました

言われて、ちょっと詰まってしまった。中学一年の出会いを思い出す。愛らしい婚約者の姿に照れた俺は、翠を避けるような行動を取っていた時期がある。それが翠のプライドをおおいに傷つけたであろうことは想像がつく。

翠が俺に突っかかってくるきっかけを作ったのが俺自身だとしたら……。

「イコール好意じゃないだろう」
「どうでもいいやつなら、無視して終わりじゃない?おまえらは許嫁同士って特殊な事情があるけど、それだって翠がそこまで張り切る理由にならない。翠はひとりの人間として豪に認められたいんだよ。なんなら頼りにされたいし、褒められたい」

そんな可愛げのある性格だろうか。しかし、キャンキャン突っかかってくる翠をいなしはしても、認めて褒め称えた経験はないなと思う。

「ほい」

祭がカウンターに封筒を置く。中身は何かのチケットのようだ。

「仕事先からもらった。ITとファッションがテーマのショーだって。どんなかさっぱりわからん。興味もない。やるよ」
「俺も興味ないぞ」
「翠はあるんじゃない?」