不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました

「だから、猛さんは言ってるんだ。『俺たちは子どもを作りません』って。そういう主義ですって」
「いいと思う。私も誰にも言わない」
「そうしてくれ。……俺たちにその役割を肩代わりさせてしまったと思ってるんだろうな、猛さんは」

愛する人同士が一緒になるのも大変なこの世界。私なんか愛してもいない、むしろ嫌いな相手と結婚しなきゃならないし。
それでも斎賀を出ないのは、局長にはここにいる意味があるんだろうな。それは私もきっとそう。

我が家は青山にあるので、一般道でもあっという間だ。間もなく到着する。ドライブが終わる。

「ねえ、豪。一応聞くけど、私たちの間に子どもができなかったらどうする?」

ふと聞いてしまった。口にしてから、あまりいい質問じゃなかったなと感じる。だって普段は許嫁同士だと意識せずに生きているわけで、子どもの話とかちょっと生々しい。

「そういうこともあるだろ」

豪はこともなげに答える。

「でも、豪は本家の血筋を残せる唯一の人間でしょう?私と離婚して、分家や他所から新しい奧さんをもらうことになるんじゃない?」
「そんなことまでじいさんたちに決められてたまるかよ」

馬鹿らしいと言わんばかりにため息をつき、豪はハンドルを切る。我が家は目の前だ。