にこっと最高の笑顔を作り、ね?と言わんばかりに隣の豪を見上げる。すると豪も心得たもので、普段は絶対……可愛い彼女以外には見せないだろう優しい微笑みで私を見下ろしてくる。
仲睦まじい婚約者同士ごっこ。たぶん、普段の私たちを知っている局長が笑いを堪えてる。豪の影で見えないけどね。
「ふん、まあいい」
おじいさまが呆れたようにため息をついた。引き下がってくれる雰囲気だ。
「ともかく結納の日取りは早々に決めなさい。本家の跡取りの結婚だぞ。あまりだらだらと引き延ばしては分家の連中に示しがつかない。特に甥や姪の血筋は、斎賀の本流に取って代わろうと虎視眈々と狙っていることを頭に入れておけ」
斎賀は当主とその家族が本流。当主の兄弟の血筋は斎賀を名乗っても分家と同じ扱いになる。特務局にも数名、斎賀の一族はいるけれど、扱いは私たち朝比奈と変わらない。
私的には、そういう古くさい一族主義を貫いてるから、面倒事が多くなると思うんだけど。本家なんて誰が継いでもいいじゃない。同じ斎賀なんだから。
「翠嬢」
不意に声をかけられ、慌てて笑顔を向けるとおじいさまがふさふさした眉毛の奥でぎらっと目を光らせた。
「あなたの仕事は子どもをたくさん産むことだ。斎賀の血を絶やさぬよう、本流の血を絶やさぬよう」
「……はい」
笑顔、引きつってなかったかしら。
仲睦まじい婚約者同士ごっこ。たぶん、普段の私たちを知っている局長が笑いを堪えてる。豪の影で見えないけどね。
「ふん、まあいい」
おじいさまが呆れたようにため息をついた。引き下がってくれる雰囲気だ。
「ともかく結納の日取りは早々に決めなさい。本家の跡取りの結婚だぞ。あまりだらだらと引き延ばしては分家の連中に示しがつかない。特に甥や姪の血筋は、斎賀の本流に取って代わろうと虎視眈々と狙っていることを頭に入れておけ」
斎賀は当主とその家族が本流。当主の兄弟の血筋は斎賀を名乗っても分家と同じ扱いになる。特務局にも数名、斎賀の一族はいるけれど、扱いは私たち朝比奈と変わらない。
私的には、そういう古くさい一族主義を貫いてるから、面倒事が多くなると思うんだけど。本家なんて誰が継いでもいいじゃない。同じ斎賀なんだから。
「翠嬢」
不意に声をかけられ、慌てて笑顔を向けるとおじいさまがふさふさした眉毛の奥でぎらっと目を光らせた。
「あなたの仕事は子どもをたくさん産むことだ。斎賀の血を絶やさぬよう、本流の血を絶やさぬよう」
「……はい」
笑顔、引きつってなかったかしら。



