「私は、事務方のお手伝いしかしていません。雁鐘(かりがね)さんと六川(むがわ)さんのお仕事を近くで拝見して、すごく勉強になりました」

雁金さんは元銀行員で融資担当だった男性、六川さんは警視庁の公安出身。ふたりとも人材登用でヘッドハンティングされてきたスペシャリストだ。

「いや、朝比奈のフォローが的確だったとふたりとも褒めていたよ。処理も早くて、若いのに見どころがあるって」

局長の言葉になお頬の筋肉が緩む。嬉しい。実は連日の残業で死にかけながらこなした仕事だから、評価してもらえると報われた気分になる。二十歳以上年上の実力派の先輩たちが褒めてくれたというのも、嬉しくて笑顔が止まらない。

「知っての通り、大臣の金の流れに不正があれば、任命責任を問われるのは総理だ。内閣の、ひいては国家の安定のために、俺たちの仕事はある」

きりりとした表情で言う局長は、この特務局を背負って立つのに相応しい気概を持った人物だ。私は斎賀本家はあまり好きではないけれど、局長のことは好きだし尊敬している。

「朝比奈がここを支える人材になることを期待しているよ」
「はい!」

私は負けじと背筋を伸ばしたけれど、嬉しくて顔は締まりなくニコニコしていたと思う。

「局長、ちょっといいですか」
そこへ割り込んできた……というか私たちの話が終わるのを待っていたのは斎賀豪だ。
でた~と私は無意識に顔をしかめる。