不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました

「豪はダサいわね。これだから普段から運動していないヤツは」

翠は俺のネイビーのTシャツに五分丈のパンツの格好を見て、勝ち誇った表情で言う。

「トレーニング設備は実家にひと揃えあるからな。毎週末、実家でトレーニングはしているが。誰かに見せびらかす必要がないと機能美のみを追求するようになるんだ」
「私、見せびらかしてなんかいない」
「まあ、実際にトレーニングしていないヤツは機能性がわからないかもしれないな」

形から入ってるだけで、実際は運動していないだろうという俺の煽りに、翠は怒りを込めた視線を送ってくる。しかし、さすがにここでキャンキャン騒ぎ立てることはしなかった。ここからは互いに持ち場についてターゲットを待つことになる。

「それにしたって、もう少し隠せ」

俺はフロアを歩いて行く翠の後ろ姿にひとりごちた。
背中は丸出し、ヒップのラインはくっきり、長い手足を見せびらかすような翠の格好は、スポーツクラブ内でかなり目立つ。
この時間帯の利用者が高齢者や主婦ばかりでよかった。夜のスポーツクラブに出入りするようになったら、羽織るパーカーかもう少し露出やボディラインを抑えたウェアを買ってやろう。

俺はマシンエリアでトレーニングを開始。翠はトレッドミルマシンでランニングを始めた。