不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました

デリバリースタッフが帰っていくと豪が口を開いた。

「仕方ないな」

豪だって絶対わかってるはず。祭が余計なお節介をしたんだって。だからこそだろう。豪は気にしていなさそうな素振りで言うのだ。

「ふたりで楽しむしかないだろう」

そ、そういう結論に達するしかないよね。お酒はともかく、料理やケーキはまたの機会に回すわけにはいかないもの。
リビングのローテーブルに並んだ美味しそうな食事、お酒の数々。豪はソファにかけ、ためらいもなく音を立ててシャンパンを開けた。
ふたつのグラスに注ぐと、片方を手渡してくる。
私は慌てて豪の隣のソファに腰かけた。

「ハッピーバースデー」

豪がグラスを掲げる。おそらくクリスタルのグラスをぶつけられないので、私もその場で掲げた。

「あ、あのね、豪」
「なんだ?バースデーソングでも歌うか?」
「いいわよ、そんなの」

ふたりでいいの?
本当に私と一緒で楽しい?

聞けない質問が胸の中でざわざわする。変なの。昔だったら、なんでもずばずば言えたのに。
私ってばどうしちゃったんだろう。今、豪が何を考えているかが気になってしょうがない。

「食べよう。きっと美味いぞ。祭はこういうチョイスは外さない」
「確かにそうだね」

オードブルの皿から、キャビアとオニオンの載ったバゲットを取り口に放り込む。
うん、美味しい。豪も鴨のローストを食べ、私と同じように頷いている。