不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました

なんだか、見透かされてるみたい。
でも、こういう豪の物言いが最近はそんなに嫌じゃない。豪は豪なりに私を尊重してるし、気遣ってる。言葉が強いのと、私が常に噛み付く体制でいるからこじれるだけで。

「俺としては黒瓦の若頭が早々に逮捕されることを願ってるな。あいつはおまえに会うたびちょっかいをかける。次はさらわれるぞ」
「もう、接触するようなことはないわよ。っていうか、一回目も二回目も別人だと思われてるんじゃないかな」

つまり、あの男の好みのタイプなのね。うええ、嬉しくない。

「あのな……」

豪が言いかけてなんでもないと話をやめた。

たぶん、豪は私が調査対象と直接接触することを心配してるのだと思う。前回の失敗もある。私がもう少し慎重にならなければ、豪はいつまでも私を信用してくれないだろう。

「鬼澤が用意した海外拠点は、私が現地の管理者と繋がってる。タイとシンガポールね。何かあったらすぐに動けるようにしてるから。詐欺グループ摘発は、時間の問題よね」

胸を張ったけれど、豪は別なことを考えている様子だった。