不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました

「やだなあ、だから何もないって」
「おまえ、土曜日に風間さんと会っただろう。俺のマンション前で」

ぎくりと私は固まった。豪は私の気持ちを見透かして言っている。

「気になるなら聞いてくれ。俺も誤解はされたくない」
「だから、平気だって。ちゃんと信じてるから」
「じゃあなんでヘラヘラ笑って俺の方を見ない！？」

豪が声を荒らげた。

「言いたいことがあるなら言え。聞きたいことがあるなら聞け！」
「平気だって言ってるでしょ！？」

思わず私も怒鳴っていた。

「私は平気なの！平気ったら平気！やめてよ、もう。喧嘩したくないから黙ってるのに、暴こうとしないでよ！ちゃんと飲み込んだのに」

言いながら、喉の奥が苦しくなってくる。目から熱い塊みたいな涙がぼろんぼろんと零れ落ち始めた。

「大丈夫って言ったじゃん。気にしてないって言ったじゃん。豪のこと信じてるもん。私、理解あるいい婚約者でしょ？それでいいじゃない」

涙が止まらない。悔しいのか怒っているのか……ああ、私は寂しかったんだ。豪が嘘ついていたかもって思ったことが。信じきれない自分が。悲しくてたまらなかったんだ。