きっとサクラが咲く頃

するといつの間にか……眠ってしまったらしい。

気付けば下から賑やかな声が聞こえてきている。
眠たい目を擦って、リビングへの階段を降りていく。そしてドアを開けると‐見慣れた二家族の光景だ。


「千聡ちゃんおはよう！」
匠馬のお母さんが鍋をかき混ぜながら、手招きする。

「この牡蠣すっごい当たりだった！！めちゃめちゃ美味しいから早く！！」
おばさんは早速お椀に牡蠣をよそっているらしい。
私はおばさんの隣に座って、それを受け取った。

その牡蠣は確かにプルルンとして瑞瑞しい牡蠣。
口の中に含むと‐プチっと弾けるように濃厚な味が広がっていった。


「千聡ちゃんどう？OL生活は？」
おじさんが身を乗り出して聞いてくる。

「普通ですよ。セクハラとかパワハラとかとは無縁だから良かった」

「でも匠馬だけでなく、千聡ちゃんも出ていくとはね……ここからでも通えなくはないんじゃない？」

「でもさすがに…電車で一時間半はキツイですよ。
今三十分だけど、それでも毎日結構ギリギリです」

「いやー千聡がちゃんと一人暮らししてるか、私も心配なのよー」
お母さんが割り入って話に入ってくる。