“カラオケ”ってよくわからないけど、好きな曲を歌えばいいみたい。

「はい。七瀬の番」

「う、うん」

少し緊張しながらマイクを受け取った。
イントロが流れて誰かが呟く。

「七瀬さんっぽい選曲だね」

その声に周りのみんなも頷いた。


歌い終わると、拍手の音が響いた。

「七瀬さん、歌上手い!」

「思わず聴き入っちゃった!」

「私なんて涙出てきちゃったよ」

「ありがとう」

すごく嬉しい!

歌うことは好きだったけど、いつも褒めてくれるのは大人ばかり。
だから、同い年の人に褒められることは新鮮で不思議な気分。

……やっぱり、来てよかった。


「春菜ちゃんはこの後どうする?」

「どうって?」

「あれ、聞いてなかった? みんなでご飯食べに行くんだけど、春菜ちゃんも行く?」

「えっと…」

時計をみると門限の6時まであと30分。
急いで帰らないと間に合わない。

でも……みんなとご飯食べに行きたい!
友達と外食なんてしたことないもん!

少しくらい遅れても、大丈夫だよね……?

「私も行く!」

そう返事をした時、麗さまから電話がかかってきた。

今電話に出たら、絶対麗さまに怒られる。

無視しているのに、何度も何度もかかってくる。

もう! うるさい!

ムカついた私はスマホの電源を切った。