「おい、生きてるか、生きてるか。」
そんな声と一緒に揺さぶられて目を覚ました。
もう、もうちょっと優しく扱ってよね。そう思いながらくああー、と伸びをする。
「か、可愛い。」
低くて心地よい声が降ってくる。
可愛い、だって。嬉しいな。
まだボヤーとする頭で目を開けると、私は知らない男の人に抱っこされていた。
ドクンドクンドクンドクン
耳のすぐ近くで心臓の音が聞こえて落ち着く。
ああ、温かい音の正体はこれか。
「家に帰ったら、温めて、それからご飯も、あげる、から、ね。」
色白で弱そうな見た目のくせに、走るのは早い。
ハッハッ、と息を切らして走っている。
…私のために。
そうだ私、死んでない。そっか、この人が助けてくれたんだ。
白い頰が上気して赤くなってる。眉間にしわを寄せて走っている。
なんか知らないけど白衣着てるし。
でもその細縁のメガネは似合ってるよ。
黒い髪のサラサラしてるのも好きかも。
そんなことを考えて、情けなくなる。
もうやだ。辛い。
私も人間になりたい。
夜空を見上げると、今日は星がよく見える。
流れ星って、星のかけらのことでしょ、てことは流れ星って星屑じゃないの。
だったら私が星に願ったら、願いが叶うかもしれない。
疲れた小さい頭でそんなことを考えて、私は目を閉じた。ギュッと願ってみる。
人間になりたい。
人間になりたい。
人間になりたい。

パッ、と目の前が光った。
ピンクとか黄色とか赤とか青とか、とにかく色々な色の光が私に飛び込んできた。

「うわっ。」
頭の上で、あの白衣の人の小さな叫び声が聞こえた気がした。