「ファンの人たちにその説明で納得してもらえると思いますか?責任はどうするのですか?」


 質問が止まっていたが、またある一人の記者が質問を始めた。

 その声は、千春にも聞き覚えがあった。
 以前、秋文を厳しい質問で追い詰めた男性記者だった。
 監督はそれがわかったのか、そちらに先程よりも少し厳しい視線を向けた。


 「先程話しましたが、秋文選手は悪いことをしてないのに、何の責任を取るのでしょうか?騒ぎを起こしたことの責任でしたら、試合の勝利と選手をまとめあげるという務めで十分かと思います。」
 「…………。」
 「質問は以上のようですね。では、これで、会見を終わります。」


 男性記者への質問が終わると、監督はまたにこやかな笑顔に戻っていた。
 そして、颯爽と歩いてく彼を皆が呆然と見ていた。

 そして、もちろん、千春も同じだった。


 「これって………秋文は日本代表もリーダーも続けて言いって事だよね?」


 千春は一人でテレビに向かって質問する。もちろん、答えてくれる人はいないけれど、少しずつ先程の会見が現実だという事がわかってきた。


 「よかったぁ………。」


 千春は緊張して前のめりになっていた体をソファに倒した。
 やはり秋文の頑張りと誠実さを見てくれていた人はいるのだ。
 信じてくれる人がしっかりいたんだ。

 そのありがたさと嬉しさで、千春はうるうるきてしまう。


 「秋文と付き合うようになってから、何か涙もろくなったなぁー……。きっと、幸せすぎるから泣けてくるんだろうなぁ。」


 千春は、そんな事を思いながら、ゆっくりと目を閉じた。
 昨日は寝るのが遅くなってしまったし、ずっと緊張状態だったので、身体が疲れてしまったのだろう。
 問題が解決した安心感からか、千春はすぐに眠気を感じて、ソファで寝てしまった。

 夢でも、きっと生き生きとサッカーをする彼に会えるだろうと信じながら………。