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 秋文が緊張した面持ちで所属チームの事務所に到着すると、入り口のエントランスに見覚えるある人が座ってた。


 「監督……。どうしたんですか、こんなところで。」
 「おまえが来るだろうと思ってな。何か話しがあるんだろう。」
 「はい……昨日の話の結論が出ました。」


 そこにいたのは、日本代表チームの監督だった。昨日は話し合いのため来ていたが、今日は来る予定ではなかったはずだ。
 けれども、秋文の気持ちがわかっていたのか、待っていてくれた。秋文は驚きながらも、感謝をして、話をすることにした。


 秋文は、座ったままの監督を強い視線で見つめる。監督は驚いた表情も見せずに頷いて、「では、先に私に聞かせて貰おうか。」と言った。

 朝早い事もあって周りには誰もいなかった。ここで話してもいいものかと迷いながらも、秋文は監督の言葉に従った。

 そして、秋文は自分の気持ちをしっかりと伝えようと思った。
 それがもし叶わなかったとしても、最後まで抗おうと思っていた。


 「昨日話した事なんですが。……よく考えた結果、リーダーも降りたくないと思っています。」
 「ほう。………それは、どうしてだ?」
 「悪いことをしたと思っていません。それに責任をとるなら、任された仕事をこなして責任を果たしたいです。」
 「………なるほどな。」


 元GKだった監督は、秋文より背が高くがたいも大きい。50才とは思えない鍛え方をしており、近くに立たれると威圧感がある。けれど、今はそうではなかった。秋文の隣に立ちながら、秋文の肩をトントンと叩いた。
 そして、監督の表情はとても穏やかだった。