「………そんなのダメよ!」
 「立夏……。」
 「少しカッコ悪くても、今までみたいで出来なくても、体引きずってでも、喘いで続けてよっっ!………サッカーあんなに好きだったじゃない。」
 「……………。」
 「それぐらいで、諦めないで……。」


 話していくうちに、ボロボロと涙を溢して嗚咽を洩らしながら、そう訴える立夏を見て、千春も我慢出来ずに、秋文の腕を掴みながら泣いてしまった。


 「悪いな……俺がもうしないって決めたんだ。」
 「………バカ秋文……。」
 「俺の分までお前たちに泣いて貰えてよかったよ。千春は、きっとこれから何回も泣くんだろうな。ごめんな……。」
 

 千春の頭を優しくポンポンの撫でる秋文の顔を、千春は見ることが出来ず、頭を横に振ってそれに返事をした。


 「………おまえとサッカー出来なくなるのか。寂しくなるな……。」
 「そうだな。俺もそう思うよ。」


 出は、泣きじゃくる立夏の肩を抱きながら、切ない顔でそう気持ちを伝えると、秋文も苦い顔で、小さく囁くようにそう言った。


 その涙の会話は、しばらく続き、お互いの恋人が泣き止むまで、彼らは優しく慰めてくれていた。


 千春は、秋文の引退が近づいているのを、改めて感じたのだった。