「こんな時に言う話しじゃないんだけど、話しを聞いてほしい。」


 秋文がそういうと、2人は無言のまま頷いて、彼の話しの続きを緊張した面持ちで待っていた。


 「実は………今年度でサッカーを辞める事にした。」
 「……。」
 「なっっ!」


 出は無言のまま、そして立夏はあまりの驚きに声を出して、立ち上がってしまった。けれど、2人の顔は揃って驚愕の表情だった。


 「悪いな……付き合い始めの報告に来て貰ったのに雰囲気悪くなるよな。本当は、もっと落ち着いた時期に伝えるはずだったんだけど、マスコミにバレたみたいでな……。」
 「……そんなことどうでもいいよ!何よ、何で秋文がサッカー辞めちゃうの?………あんなに大好きなのに……。」
 「……立夏、落ち着け。」


 立夏の口調は怒っているのに、顔は泣きそうだった。それを見た瞬間、千春は我慢していた涙がこみ上げてきた。

 
 「秋文……怪我の状態があまりよくないのか?」
 「まぁ、それも原因の1つだよ。それより、体が鈍くなってきた。鍛えても鍛えても、元に戻らないんだ。」
 「そうか………。」
 「完璧な状態で戦えないのに、サッカーを続けていくのは辛いんだ。」


 立夏のような切ない顔を見せて、自分の気持ちを話す秋文を見ていられないのか、出も下を向いてしまった。