「……なんで、こんなに遅いのよ!ずっとずっと待ってた。それに、私の事好きなのに、違う女の子とデートしないで……。」
 「あぁ、そうだな。悪かった。」


 立夏自身でも、強気で我が儘な事を言っているとわかっている。
 けれど、それが今の素直な気持ちだった。
 すると、少し笑いを含んだ彼の声が聞こえてくる。

 「なんで笑ってるの!?」
 「いや………かわいいなーと思って。」
 「……今の言葉を可愛いと思えるなんて、出は重症だよ。」
 「ここまで立夏を好きでいたんだ。重症だと俺も思うよ。」
 「ほんと、出はバカよ………。」


 立夏は、自分から体を彼の胸に押しつけるようにくっつくと、彼の雰囲気が更に優しくなるのを感じた。


 「立夏……抱きつかれるの嬉しいんだけど、あと時間が少ししかないんだ……。」
 「え、帰っちゃうの?」
 「いや、立夏の誕生日が終わってしまう。」
 「あ………。」


 そうだ。
 先程時計を見たときは、あと少ししか時間がなかった。もう、彼から告白してもらえる時間が少ないのだ。

 出は立夏からゆっくりと離れた。
 そして、部屋の中に入ると、薄暗い中で立夏の両手を握った。


 「立夏が好きだよ。……綺麗で可愛くて、実は女の子らしい物が好きで、泣き虫で、一途な君が………。」
 「え………。」
 「立夏は、秋文が好きだったんだろう?」
 「っ!!」


 出のまさかの言葉を聞いて、立夏は息が止まりそうになった。
 立夏は、秋文への気持ちを誰にも話した事がなかった。それなのに、彼は気づいていたのだ。

 立夏は動揺した瞳で、出を見つめることしか出来なかった。