「あ、でも、もしかしたら今回出は来ないかもよ?」
 「え……。」
 「出、とっても可愛い女の子に告白されたって言ってたみたいで。秋文から聞いたんだけど……。」
 「そ、そうなんだ……。」
 「あ、写真みる?デートには行ったみたいだよ。」


 千春は、スマホを取り出して写真フォルダを開いて見せた。
 スマホの画面に表示されているのは、立夏とは正反対の小さくて可愛い系の素朴な女の子とぎこになく微笑む出だった。
 どこかのカフェだろうか、手元にコーヒーカップが2つ見えた。デートに行った時の写真だというのがわかるように撮影されていた。

 それを立夏に見せると、彼女の表情が揺らいだのがわかった。
 瞳が揺れて、口元をキュッと噛み締めていた。


 「可愛い子だよね。」
 「……そうだね。出にお似合いなんじゃないかな?……あー、私だけが独り者になっちゃうなー。」


 冗談を言いながら、コーヒーを飲んでいる立夏だけれども、目が泳いでおり、千春の方を見ないようにしていた。
 そんな立夏にいつもならば気づかないふりをした。けれど、今日の千春は違った。


 「ねぇ、立夏。出の事、どう思う?」
 「どうって……。」
 「もう立夏に告白しないって言われたら、どんな気持ちになる?もう、次で最後かもしれないよ。」
 「………それは。」
 

 立夏は、泣きそうな顔になりながらも、何かを考えた後に、フッと小さく微笑んだ。


 「もう私なんかに囚われないで恋愛できるなら、いいんじゃないかな……。」
 「立夏………、立夏は本当にそれでいいの?」
 「いいの!だって、私は何回も出の告白を断り続けてる。………最後も同じよ。」
 「ねぇ、立夏……。」


 千春は、少し荒立っている立夏の手を両手で握り、じっと彼女の目を見つめた。
 そして、にっこりと微笑んだ。