「うーん……この仕事だと職場でやった方が早いなー……。今から行っても迷惑にならないかな。」
 千春は、ため息をつきながらPCをながめていた。
 すると、スマホが電話の着信を報せるバイブを鳴らした。
 画面を確認すると、職場で1番仲が良かった同僚の菅井からだった。勤務時間なので、仕事についてだろうと思い、千春はすぐに電話に出た。


 「もしもし。」
 『あ!いた!今、会社で大変なことになってるわよ?!』
 「え………?どうしたの?」


 菅井はずいぶん急いでいるようで、そして何故か興奮状態だった。千春は「落ち着いて。何があったの?」と心配しながら彼女の話しを待った。


 『今、千春の旦那が会社に来てるんだけど。』
 「な、なんで秋文が?!」
 『なんか、前に千春が倒れた時に迷惑かけたからって、お土産持ってきたみたいだよ。』
 「そ、そうなんだ……。」


 彼がそんな事をしに会社に行っているとは知らなかった。それだけでも、驚く事だったけれど、次の話しはその事さえも忘れてしまうぐらいの内容だった。


 『それで、帰りに取引にきてた駿さんに会って、喧嘩始めちゃったの!!』
 「えっ……えぇぇぇー!!」


 千春は、驚きのあまり大きな声を出して、その場にずるずると座り込んでしまった。
 何でそんな事になっているのだろうか。
 秋文は、駿の事を知らないはずだから、彼が元彼氏だとわからないはずだ。そうとなれば、駿からふっかけたのだと自然にわかってしまう。

 「も、もう喧嘩は大丈夫なの?2人怪我は?」
 『あ、それは大丈夫よ。千葉さんが止めてくれたから。』
 「そうなんだ……とりあえず、よかった。」


 喧嘩で怪我をしたとなれば、お互いに大変な事になる。特に秋文は、暴力行為はご法度だ。
千春は、少しだけホッとしながら、彼も駿が無事なことに安堵し、そして、千葉に感謝をした。